アメリカで開発されたCORTEN鋼をもとに、日本でも、鉄鋼メーカーが研究を重ねて耐候性鋼が開発され、多くの実績を残すようになりました。 なぜアメリカのCORTEN鋼がそのまま使われなかったのでしょうか?
それは日本特有の気候が有ります。耐候性鋼発祥の地のアメリカに比べて、日本は、周囲を海に囲まれていることから、湿度が高く、海からの飛来塩分の影響を無視できない環境におかれています。
海の近くでは金属材料はさびやすいのです。そのため、海岸近くで建設された無塗装橋梁において一部不具合が発生するという状況が起こりました。耐候性鋼の採用に適した環境条件や設計、施工方法および維持管理などについて留意すべき事項を明確にしたいといった利用者側からのニーズが高まり、耐候性鋼の系統的な調査・研究が始まりました。
1981年から当時の建設省土木研究所、建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会を中心に大掛かりな研究が始まりました。図に示す、全国の41箇所における実橋に取り付けた小型試験片の腐食量と、飛来塩分の影響調査の研究(耐候性鋼材を無塗装において使用する環境条件などを明らかにする研究)が約10年にわたって実施されたのです。
この大掛かりな研究で、日本という、環境調査からはじまり長期暴露試験片による板厚減少量やさび状態の把握が行われました。 1)飛来塩分量、2)亜硫酸ガス量、3)暴露方向(水平、垂直)について、これらの因子の鋼材に及ぼす影響が検討され、その結果、飛来塩分量の影響が最も大きいことが明らかとなり、1983年に耐候性鋼材の橋梁への適応可能な環境を海岸からの飛来塩分量で判断する指針が定められました。
具体的には、耐候性鋼材の裸仕様が適用可能な条件を
飛来塩分量 ≦ 0.05mg/100cm2.day (0.05mdd) としました。
図に示すように、海岸からの離岸距離を指標に、全国を5ブロックに分けた適用可否区分を定めています。この指針は、現在の道路橋示方書(2002年改定)にも盛り込まれ、道路橋における耐候性鋼材の適用範囲が明確化されています。 鉄道橋も上記結果を参考に、同様の指針が定められています。
多くの研究者たちの努力によって、耐候性鋼を安心して使える地域がわかるようになりました。いつの時代でも研究者の方たちの努力には頭が下がります。
写真は『耐候性鋼の橋梁への適用に関する共同研究報告書(][)―全国暴露試験まとめ(概要編)―』:建設省土木研究所、(社)鋼材倶楽部、(社)日本橋梁建設協会、平成5年3月から引用させていただきました。