耐候性鋼を使った構造物

耐候性鋼(たいこうせいこう)は、鋼表面に保護性錆(ほごせいさび)とよばれる、非晶質で緻密なさび層が形成し、それが水や酸素などの腐食因子の侵入を防ぎ、それ以降のさびの進行を防ぎます。つまり、塗装をする必要がなくなります。

一般の鋼構造物の場合、塗装を施しても塗膜の劣化度合いに応じて数年に一度、塗装の塗り替えが必要となります。初期投資の値段が安くても、構造物の何十年という寿命全体を通して考えるライフサイクルコスト(LCC)の考え方によれば、耐候性鋼を使う方が塗装塗り替えの必要がなく維持管理費用、修繕費用などが大幅に軽減されることになります。

ライフサイクルコストLCCの図


橋梁のライフサイクルコスト

図に塗装橋梁と無塗装耐候性鋼橋梁のライフサイクルコストの試算結果をしめします。図から明らかなように、無塗装耐候性鋼橋梁の方が維持管理コストは大幅に縮減可能であることがわかります。

また、塗料に含まれる成分の環境への影響が議論されており、環境対応型塗料の開発が進められていますが、塗装せずに用いる耐候性鋼は「環境にやさしい鉄鋼材料」の一つでもあります。このような理由で、道路橋、鉄道橋、建物に多く用いられています。わが国の無塗装耐候性鋼橋梁(=塗装をせずに、鋼材を裸のまま使う鋼橋)は、1936年に初めて施工されました。現在までに、無塗装耐候性鋼橋梁の実績は約1300件以上にのぼります。表面に簡易な処理を施した仕様を含めると2000件を超えるまでにいたっています。

耐候性鋼モニュメント

耐候性鋼のモニュメント

さらに、耐候性鋼の錆の色は茶褐色で非常に美しい色合いを呈していることから、モニュメントなどにも使用されています。 地球環境にやさしく、財政的にもやさしい、耐候性鋼がもっと広がるといいですね。

※ライフサイクルコスト(Life cycle cost)とは、製品や構造物などの費用を製造〜使用〜廃棄の段階をトータルして考えたもの。訳語として生涯費用とも、英語の頭文字からLCCともよばれる。製品を低価格で調達しても、使用中のメンテナンス費用や廃棄時の費用を考慮しなければ結果的に高い費用が掛かることから生まれた発想です。

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