ニッケル系耐候性鋼

耐候性鋼は、『「さび」でもって「さび」を制する」鋼』で、耐食性に優れています。ところが最近、一部の地域のことですが、層状剥離さびやうろこ状さびとよばれる耐候性鋼にとってこのましくない状況が発生する問題が生じています。問題の生じている橋梁のほとんどは、適用不可とされた地域に架設されているか、適用可能地域にあっても寒冷地で大量に散布された凍結防止剤の影響を受けたものだと考えられています。

耐候性鋼は適用可能地域であれば、腐食の問題はおきないとされていますが、近年、環境が変わっています。特に、凍結防止材の影響は無視できない状況になりつつあります。なぜなら、図に示すように1991年に環境問題からスパイクタイヤが禁止になり、道路面への凍結防止剤(=塩)の散布量が一挙に増大したためです。

塩分の図


塩分は天敵

現在の凍結防止剤の散布量は、1991年以前の10倍以上とも言われています。耐候性鋼にとっては、非常に腐食しやすい、厳しい環境になってしまったのです。

このような背景から、従来のJIS 耐候性鋼板が使用できない海浜・海岸部や凍結防止剤を散布する高塩化物環境でも無塗装(裸)使用が可能な高耐食性鋼板のニーズは非常に強くなってきました。また、塗装が不可欠である腐食性の厳しい環境や都市部などの景観が重視される地域ではトータルライフサイクルコストの低減のため塗装寿命の延長が望まれています。

日本の鉄鋼メーカーは、再び研究開発を行い、一般のJIS耐候性鋼材より格段に優れた耐候性を有する鋼材を開発しました。

ニッケル系高耐候性鋼の図

「ニッケル系高耐候性鋼」

これら鋼材は飛来塩分量が従来の耐候性鋼の適用範囲である0.05mddを超えても、優れた耐候性を示す鋼材です。

主にNi(ニッケル)を多く添加し、従来のJIS耐候性鋼に対し耐塩分特性を高めた新しい鋼材です。鉄鋼メーカーによりNi(ニッケル)の添加量(1〜3%)やその他の添加合金も異なりますが、新しい耐候性鋼は「ニッケル系高耐候性鋼」と呼ばれ、すでに多くの実績があります

今後、経済性に優れ、景観に調和する無塗装耐候性鋼橋梁が幅広く採用されることが期待されます。

図は『第3回 鋼構造と橋に関するシンポジウム論文報告集』:(社)土木学会 鋼構造委員会(2000年8月30日)から引用させていただきました。

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