耐候性鋼の歴史1:アメリカ

近年、緻密な保護性さび層の生成により無塗装(裸)使用が可能となる耐候性鋼が見直されています。

最近でこそ、耐候性鋼の需要は年々増加の一途をたどっており、社会的な認知も橋梁分野では進んでいますが、はたして耐候性鋼はどうやって誕生したのでしょうか?

橋の写真 Newburgh-Beacon Bridge


アメリカで開発された耐候性鋼

耐候性鋼のルーツは塗装寿命を延長する鋼板として1930 年代にアメリカのU.S.Steel 社により開発されたCORTEN鋼にさかのぼります。普通の鋼材にCu(銅)やP(りん)などを添加すると耐候性能が向上することは古くから経験的にしられていました。アメリカでは1900年頃から耐候性鋼のはしりとしてCu(銅)を少量含んだ含銅鋼が市販されました。

1933年になって、U.S.Steel 社からCORTEN-Aが商品化され、続いてBethlehem Steel社からMAYARI-Rが商品化されました。これらの鋼材は少量のCu(銅)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、P(りん)などを添加した低合金鋼です。しかしながら、最初から耐食性に優れる耐候性鋼を開発しようとしたのではなかったようです。アメリカの研究者は、強度に優れる高張力鋼を開発しようと各種元素を添加していた過程で、Cu(銅)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、P(りん)を添加した低合金鋼には耐候性能があることを発見しました。そして、そのような低合金耐候性高張力鋼として商品化されました。

これら耐候性鋼の祖先の鋼材は当初、貨車用材料として塗装を行って使用されていました。その後、1960年代になって、建築材料や送電鉄塔、照明灯、ガードレールに普及しはじめました。耐候性鋼の橋梁への本格的な適用は、1964年にミシガン州運輸局がデトロイトで無塗装耐候性橋梁を4橋架設したことに始まるようです。

橋の写真 New River Gorge Bridge

アメリカの耐候性鋼橋梁

写真は1977年に完成したNew River Gorge橋です。耐候性鋼を用いた支間518mの世界最大の上路式アーチ橋です。耐候性鋼が使われた理由はメンテナンス費用の軽減が有ります。この橋を塗装したとして、いったいどのようにして塗りかえればいいのでしょうか?足場を組み立てると大変なことになりそうですね。 地形や橋梁形式を考えると耐候性鋼の優位性が明確になり、アメリカでは1990年頃までに100万トン以上の対抗盛況橋梁が架設されたといわれています。

耐候性鋼がもともとはアメリカ生まれ、それも耐食性を目的に開発されたものではないなんて、面白いですね。しかも当初は橋梁ではなく各種構造物に用いられていたのも、今の日本とは大きく違いますね。

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